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東京地方裁判所 昭和32年(ワ)6542号 判決 1957年12月05日

原告

株式会社日本殖産破産管財人

高野弦雄

外三名

被告

桂木勝美

主文

原告らに対し、被告は十九万九千二百円及びこれに対する昭和三十二年五月一日から支払いずみまで、年五分の割合による金員を支払うべし。

訴訟費用は、被告の負担とする。

この判決は、原告らが五万円の負担を供するときは第一項にかぎり、仮りに執行することができる。

事実及び理由

原告ら訴訟代理人は、主文第一、二項と同旨の判決ならびに仮執行の宣言を求め、請求の原因として、次のように述べた。

株式会社日本殖産は、貸金等を目的とする会社であつたが、昭和二十九年六月十六日午前十時東京地方裁判所で破産の宣告をうけ、同日原告らは、その管財人に選任された。

被告は、破産会社に勤務し、昭和二十七年四月頃から翌二十八年八月頃まで、五反田支店長をつとめ、株主相互金融方式による契約の募集、契約、貸付、貸付金の回収等の仕事をしていた。被告は(一)高橋慎一に対し個人として十万円の貸金債権をもつていたが、高橋が無資力のため、その回収に困つていた。そこで被告は右債権の回収をはかるため、昭和二八年一月二十三日五反田支店において、破産会社の支店長として十万円を、回収不能になるおそれがあることを知りながら、高橋に貸付けた。被告は(二)木名瀬美雄に対し約十三万円の個人貸付金債権をもつていたが、同年二月十八日頃、(一)の場合と同じ考えのもとに、破産会社の支店長として木名瀬に十五万円を貸付けた。木名瀬が無資力のため破産会社は、右貸金のうち十一万八千八百円の回収不能を生じた。右貸金(一)及び(二)の残金の合計十九万九千二百円は、被告が支店長としての任務にそむき、回収不能となることを知りながら、あえて貸付けたものであつて、破産会社の被つた損害である。よつて原告らは破産管財人として、被告に対し、被告の不法行為よつて被つた損害十九万九千二百円及びこれに対する、原告らがその支払いを催告したとき、履行日を指定した日の翌日である昭和三十二年五月一日から、支払いずみまで、民法所定の年五分の割合による損害金の支払いを求める。

被告は、適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書もしくは準備書面も提出しない。

被告は、原告らの主張する事実を争つたと認められないから、その事実を自白したものとみなす。

右事実によると原告らの主張する十九万九千二百円は、被告の不法行為によつて、破産会社が被つた損害と認められるから、被告はこの金員と、民事法定利率年五分の割合による損害金を支払うべきである。原告らの請求を正当と認め、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用して、主文のとおり判決した。

(裁判官 石橋三二)

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